地震に伴う津波や、河川氾濫など大規模災害からの復興・復旧に欠かせない地籍調査が静岡県内は全国平均よりも遅れている。2018年度末の静岡県の進捗(しんちょく)率は24・3%で全国都道府県の平均52・2%を大きく下回った。県や市町は津波浸水域と緊急輸送路や河川で民地との境界線を確認する作業を優先的に進めているが、専門職員と費用不足に、担当者は頭を悩ませている。
市町別の進捗率をみると、御前崎、菊川、牧之原各市と吉田町は完了したが、10%以下の市町が目立つ。2・9%にとどまっている静岡市に、静岡商工会議所(酒井公夫会頭)が昨年8月、災害への対応力強化に向けて調査を促進するよう求める要望書を提出するなど、民間からも早期実施を求める声が上がる。
調査が進まないのは、市町にとって成果の見えにくい地道な事業であることや、市町の専門職員、財源の不足がある。県内市町の地籍調査関連の予算は例年合計でも7億円程度で調査面積は10~15平方キロ。既に完了した1627・65平方キロの調査には総額約1100億円を投じてきた。県内の対象面積6692・08平方キロの調査には5千億円程度かかるとの見通しもある。
進捗率7%の藤枝市建設管理課の担当者は「なかなか予算が回って来ず、特殊な作業なので経験者が少ないのも悩み」と明かす。
市町の人材不足を補うため、県と賀茂地域6市町は17年度から、地籍調査の共同実施を始めた。これにより市町は長年、着手できずにいた調査を開始することができた。ただ、進捗率はまだ1%に満たない市町が多い。
県は全県で調査が必要な箇所の優先順位を決め、市町は18~22年度の5年間で県道や県管理の2級河川と民地との境界を確認する調査を進めている。災害復旧に最も重要な緊急輸送をいち早く確保する狙い。津波浸水区域も優先的に調査し、18年度末までに対象139平方キロのうち、114平方キロで完了した。
県農地計画課は地籍調査について「防災上の早期復旧を意識し、土地取引の円滑化につなげるのが大きな役割。経済波及効果は高い」と強調する。
<メモ>地籍調査 土地一筆ごとにその所有者や地番を正確に調べるとともに、境界線などについて座標値(経緯度)を使って高精度の測量を行い、地籍図を作成する調査。地籍図として公的で正確な地籍があれば、津波などで地形や建物が原形をとどめないほどの被害を受けても、土地の境界が容易に復元できる。東日本大震災で地籍調査が未実施だった地域は、復旧に遅滞が生じているとされる。
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January 19, 2020 at 09:45AM
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