どうすれば必要な人に「現金給付」がいきわたるのか?〔写真:アフロ〕
新型コロナウイルスへの対応で、感染拡大防止とともに大切なのが、所得減少などで経済的に困難な状況に陥った国民への支援です。4月7日に緊急事態宣言が発令され、多くの労働者が経済的に不安定な状況にいる中、それは必要不可欠と言っても過言ではありません。
このたび、伊藤武志(大阪大学・教授)、藤解和尚(藤解コンサルティング・代表)、日沖健(日沖コンサルティング事務所・代表)の三名は、賛同者の方を含む多くの知人たちのアドバイス・応援を得て、国民への緊急経済対策について以下の提言をとりまとめました。
〔提言1〕審査を簡素化した現金給付と年末調整・確定申告での課税調整
一定の条件に該当する国民1人当たり10万円支給する。ただし収入減証明書など必須とせず審査を簡易化し、申請を受け付ける。支給金額を課税所得として扱い、生活困難者または収入減少者に該当しない所得者からは、年末調整や確定申告で実質的に返金してもらう。
〔提言2〕給付金支給において電子マネーを利用
中期的課題として、プリペイド式やポストペイ式の電子マネーによる支給を可及的速やかに推進する。
この2つの提言について、政府が3日に公表した経済対策と対比しながら、考え方を解説します(なお、提言作成は4月6日で、その後の政府が公表した施策や感染など情勢の変化は勘案していません)。
「生活困難者の支援」が最優先
リーマンショックや東日本大震災といった非常事態では、政府による経済対策が行われました。目的としては、「生活困難者の支援」や「経済活性化」などがあります。
どちらも大切ですが、新型コロナウイルスでは幅広い業種で業績が急速に悪化し、非正規労働者を中心に解雇・契約打ち切りの動きが始まっていることから、今回の提言は、緊急性が高い「生活困難者の支援」に限定します。
経済対策というと、国民の間で期待が高いのが、「消費税の減税」です。ただ、消費税減税は、システム変更など準備に時間がかかりますし、消費するお金が足りない生活困難者にとってはさほどメリットはありません。また、外出自粛を要請し、消費行動を抑制しようとしている政府の方針とも矛盾します。
消費税減税は、「経済活性化」には一定の効果を見込めますが、「生活困難者の支援」にはあまり繋がりません。したがって政府が推進しようとしている現金給付の改良について提言します。
窓口での「対象者のスクリーニング」は困難
政府は3日、新型コロナウイルスの感染拡大で収入が減った世帯への1世帯あたり30万円を現金給付する枠組みを決めました。減収後の月収が一定の基準を下回る世帯に対象を絞り、高額所得者への給付は見送ります。希望する人が市町村に自己申告して受け取る仕組みを想定しています。
こういう支援で難しいのが、公正さの確保。支援を必要としない高額所得者を除外し、困難度・緊急性が高い弱者をピンポイントで支援するのが好ましいところです。ただ、政府が想定する自己申告では、高額所得者を排除することはできません。
かといって、申請者の所得状況をきちんと確認しようとすると、申請者にも市町村にも膨大な手間・作業が必要です。スピード感にも欠けます。市町村の窓口で「何で俺の申請は認められないんだ!」と怒号が飛び交う場面が目に浮かびます。
給付金の申請・支給方法に工夫が必要です。政府は、市町村での申請を想定していますが、これはどうでしょうか。たくさんの国民が公共交通機関を使って役所に出向き、窓口で長い行列を作り、役所の担当者に怒号を浴びせる姿が浮かびます。政府が国民に外出自粛・3密回避を要請しながら、率先して外出を奨励し、新たな3密スポットを作り出すというのは問題でしょう。
この問題を解決するために、わたしたちは、所得が下がらない公務員等給与所得者、年金受給者、失業保険者、生活保護者等を除いた全世帯に一律で支給し、所得が下がらなかった人たちや一定以上の所得がある人たちからは所得税で実質的に返金してもらう方法を考えました。
まず5月に、10万円を支給します。政府の予定どおり給与明細書などがあればそれをお持ち頂いたうえで申請していただきます(郵送・電子メールも可)。ただ証明書類がなくても、申請は受け付けます。これによって申請する国民の準備の手間、可否を判断する自治体の手間が省けます。給付金は課税所得の扱いです。
給与所得者は12月の年末調整で、自営業者などは来年1~3月の確定申告で課税されるので、高額所得者からは実質的に給付金が返金されます。どの程度返金してもらうかは、これから被害の状況などを確認して、年内に税率を検討すればいいでしょう。
これによって、郵送あるいはインターネットでの申請も現実的になります。そうすれば、市町村窓口が3密スポットになることはなくなります。
電子マネー導入を検討する時機
支給方法について、電子マネーの導入が中期的な課題です。
今回は、給付のスピードを考えると、現金貨幣で給付するしかありません。しかし、2008年にリーマンショック、2011年に東日本大震災、そして今回の新型コロナウイルスと、数年おきに経済対策をしている状況を踏まえると、電子マネーの活用を推進する時機だと私たちは考えます。“中期”とは今年度中を想定しています。
私たちは、給付金をプリペイド式やポストペイ式などの電子マネーを利用して支給することを提言します。これは、以下のような海外の先行事例と同様のもので、技術的な問題はありません。
<海外の事例1>
アメリカ農務省・食品栄養サービス局は、低所得の家庭が栄養面で適切な低コストの食事を摂ることを補助し、食品の購買力を高めるためにSNAP(Supplemental Nutrition Assistance Program)を展開している。ここでは、EBT(Electrionc Benefit Transfer)カードというプリペイド式電子マネーが15年以上使われている。
<海外の事例2>
国連WFP(World Food Programme)は、飢餓と栄養不良をなくすために活動しており、2013年からレバノンのシリア難民に食料を購入できるEカードという電子マネーを配布している。
いったん仕組みさえつくれば、これ以降の支給での確認手続きや支給手続きを効率化することができます。今後の経済対策での給付金支給も速やかに実行できるでしょう。
電子マネーのメリット
また電子マネーなら、給付金を酒やタバコ、ギャンブルといった目的に使えないようにすることができますし、不正を減らすこともできます。電子マネーの利用期限を設けて、貯金ではなく使っていただくようにすることもできます。さらに、購買や使用の記録が残るので、次の政策立案の参考にすることができます。
このように必要な方に必要なだけきちんとお金を届けることは、今の時代、技術的には十分に可能であり、意義の大きいことです。今回の緊急経済対策をきっかけに、早期の導入に向けて舵を切ることが望まれます。
新型コロナウイルスという未曾有の危機に直面し、こうした経済対策は「何でもあり」になりがちです。ただ、そういう中でも効果的・効率的で、社会をよりよくするやり方を模索したいものです。
また、政府はこれから順次、具体策を打ち出しますが、私たち国民は、「政府が決めたことだから」と無批判に受け入れるのではなく、少なくとも補正予算で本決まりになるまで声・思いを届けたいものです。
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April 09, 2020 at 06:00AM
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