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原油の「価格戦争」に幕 主要産油国が異例の協調減産へ - 日本経済新聞

【ドバイ=岐部秀光】サウジアラビアを中心とする石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」は日本時間13日未明に開いた緊急テレビ会議で、日量970万バレルという異例の協調減産で最終合意した。OPECプラスはこれをテコに、米国など枠外の産油国に、あわせて日量300万~500万バレルの負担を求める。新型コロナウイルスの感染拡大による経済の急ブレーキで世界の原油貯蔵能力が限界に近づくなか、主要な産油国が一転して協調に動き出した。

今回合意した減産は、ロシアやサウジの現在の生産量に匹敵するほどの破格の規模だ=ロイター

今回合意した減産は、ロシアやサウジの現在の生産量に匹敵するほどの破格の規模だ=ロイター

協調減産は異例ずくめだ。過去のOPECやOPECプラスの会合では日量200万~300万バレルの生産調整で激しく紛糾してきた。今回合意した減産は、ロシアやサウジの現在の生産量に匹敵するほどの破格の規模だ。

サウジとロシアは3月の協議決裂後、あからさまに責任を押しつけ合う泥仕合を演じてきた。しかし新型コロナ危機による未曽有の需要減が、再び両国を生産同盟に引き戻した。

サウジの国営石油会社サウジアラムコは13日にも、5月渡しの公式販売価格(OSP)を発表する予定だ。4月のOSPの大幅な値引きが火ぶたとなった「価格戦争」は幕引きとなる見通しだ。

サウジなどはOPECプラスの合意をテコに米国などから協力を引き出したい立場だ。すでにノルウェーやカナダは協力の可能性を示唆している。トランプ米大統領、ロシアのプーチン大統領、サウジのサルマン国王はOPECプラスの最終合意後に電話で協力を確認したもようだ。

しかし、異例の減産協力をもってしても供給過剰を止めるのはむずかしい。足元では日量2000万~3000万バレルの供給過剰がある。新型コロナウイルスの感染力や致死率は、地域によって大きなばらつきがあり、危機がいつ収束するのか見通せない。グローバル経済の正常化が遅れれば、産油国は減産の強化を検討せざるを得なくなる。

原油を貯蔵できるのは産油国が各地に持つ備蓄タンクやパイプライン、精製施設などだ。貯蔵の能力が限界を超えると、石油市場は深刻な危機に直面する。

産油国やトレーダーは、コストをかけてチャーターした洋上のタンカーを貯蔵施設として利用せざるを得なくなる。採算割れとなる産油国は操業を停止するしかない。設備を無理に停止させると、油田の採掘可能年数が短くなるリスクがある。生産の再開にもコストが伴う。

一部の産油国は、あふれた原油を引き取ってもらうため、業者に手数料を支払うことになる。原油の種類によっては価格が事実上のマイナスに転じる可能性がある。

産油国の結束には危うさがある。サウジは9日のOPECプラスで日量1000万バレルの減産を決め、翌日の10日に自身が議長を務める主要20カ国・地域(G20)エネルギー相会議で米国などの協力を引き出して、日量1500万バレルの実質減産を発表するシナリオを描いていた。

しかしOPECプラス内部で、メキシコが合意を受け入れることを土壇場で拒否し、これがG20の議論にも影響した。原油安に備えてオプション契約を結んでいたメキシコは、備えを怠った他の産油国と同様に強いられるのは不当と訴えた。結局、全体の減産量を引き下げざるを得なかった。

エネルギーの純輸入国が多いG20では、産油国の利益を前面に出した声明に消費国から懸念の声が出たもようだ。

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