政党支持率の1%の上下にも泣き笑いをする政治家も多かろう。だが、それが嘘のデータだとしたら……。 フジテレビと産経新聞社の合同世論調査で不正が見つかった。業務を委託されていた会社が、調査の約半数を再委託。そこが架空の回答を作成していたのだ。
では、他社の世論調査でも不正が行われる可能性はないのか。朝日、読売、毎日の各紙、共同通信、NHKに訊くと、各社とも外部委託は認めるが、再委託はしていないという。不正の防止策については、 「調査の実務は調査会社任せにはしていません。調査当日には、電話調査会場に本社世論調査部員が立ち会い、調査会社の社員と一緒に調査の進み具合やオペレーターの電話内容をチェックするなどして、適切に運用されているか確認しています」(朝日新聞社広報部) 他社もほぼ同様の答えだ。ただ、毎日新聞は、今年4月以降、電話調査会社等と共同で設立した「社会調査研究センター」が調査を行うようになった。 「調査は自動音声で応答するオートコールの電話をかけたり、携帯ショートメールで回答画面へのリンク情報を送付したりする方法を取っており、全てコンピューターで自動化。人為的な不正が介在する余地がありません」(毎日新聞社広報) 機械化の背景には、オペレーターを使った調査方法の限界があるようだ。日本世論調査協会の小林康有事務局長が語るには、 「固定電話の場合、相手が電話に出ても、調査員が『世論調査』と言っただけでガチャッと切られる。携帯電話の場合、女性などは知らない番号からかかってきたら、不審がって出てくれません。1件のデータ取得のために、10件以上電話するケースも珍しくないのではないかと思います」 昨今、かかってくる電話に対する人々の警戒はことのほか強い。不正を働いた会社では約500件もの回答を得なければならず、データを捏造した社員は「魔が差したのか」と小林氏は推測する。調査はもはや機械でなければこなせない“労役”なのか。 架空回答を含む調査は1年間で14件もあったというが、そこには電話をめぐる現代の世相も垣間見える。 「週刊新潮」2020年7月9日号 掲載
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