東京23区内にある特別養護老人ホーム(特養)の約4割が、国や都の想定で洪水時に最大3メートル以上の浸水が見込まれる場所に立地していることが分かった。7月の豪雨では熊本県で浸水想定区域内の特養が浸水し、多数の犠牲者が出た。水害が各地で頻発するなか、避難対策の強化が急務だ。
厚生労働省によると、特養は全国に1万502施設(2019年9月末時点)ある。今回の調査は東京23区を対象にしたが、他地域でも低地に建つ特養があり、浸水リスクを抱えるとみられる。
7月1日時点で23区内で運営する特養319施設を対象に、国や都が想定する最大規模での洪水時の状況を調べた。調査には住所から災害の被害想定を検索できる国土地理院の「重ねるハザードマップ」を活用した。
最大で3メートル以上の浸水が想定されるのは319施設中128施設あり、定員の合計は約1万1千人に上った。内訳は最大3メートルが63施設、同5メートルが56施設、同10メートルは9施設だった。一般的に3メートルの浸水で1階の天井付近まで水没し、10メートルでは3~4階まで水につかる計算になる。大規模浸水が見込まれる東部の区で最大3メートル以上の浸水が見込まれる施設が多い。
2017年の九州北部豪雨、18年の西日本豪雨、九州を中心とする今年7月の豪雨など、近年は大規模な水害が相次いでいる。厚労省によると、今年7月の豪雨では高齢者施設91カ所が浸水被害に遭った。入所者14人が犠牲になった熊本県球磨村の特養「千寿園」は、国が洪水時に10~20メートルの浸水を想定する区域にあった。
水防法はこうした浸水想定区域に立地する高齢者施設などの「要配慮者利用施設」に対し、避難計画の策定や避難訓練の実施を義務付けている。具体的な訓練内容は各施設に任され、備えは施設によって差がある。
江戸川区のある特養は最大5メートルの浸水が見込まれるものの、年2回実施する避難訓練は、地震や火災の想定にとどまる。担当者は「車いすで生活する利用者が多く、職員が階上まで運ぶのは大変。洪水時については机上で避難の流れを確認するだけになってしまっている」と話す。
最大10メートルの浸水が想定される北区の特養では19年10月の台風19号の際に近くの川の水位が上がり、1階にいた利用者約20人を職員4人で2階以上に避難させた。担当者は「当時はエレベーターを使えたが、浸水で停電すると避難が難しくなる」と懸念する。
国が「高齢者保健福祉推進10カ年戦略」(ゴールドプラン)を策定した1989年以降、全国各地で高齢者施設の建設が相次いだ。跡見学園女子大の鍵屋一教授(福祉防災)は「急速な高齢化を背景に施設の用地確保が優先され、災害リスクのある場所でも建てざるを得なかった」と解説する。
今回調査した東京23区の特養でも、最大10メートルの浸水を見込む9施設はすべて、90年代以降に事業を開始していた。
鍵屋教授は「高齢者施設では利用者を別の場所に移動させることで症状が悪化したり、十分なケアができなくなったりするリスクがあり、早めの避難に踏み切りにくい事情もある」と指摘する。
中長期的には福祉施設を安全な市街地に移設することが必要だとしたうえで「国や自治体は、避難が必要になった施設の利用者を福祉施設が連携して受け入れる仕組み作りや、安全な避難場所の確保を急ぐべきだ」と話している。
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August 15, 2020 at 05:38PM
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特養4割、洪水で3メートル以上浸水も 東京23区 - 日本経済新聞
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