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刻み食やミキサー食は食べてくれなかった 55歳で亡くなった夫とおいしさを分かち合あえた料理…レシピは180 ... - 読売新聞オンライン

介護食アドバイザー…保森千枝さん(63)

夫の闘病きっかけ 献立180種

 病気などでかんだり、のみ込んだりする力が落ちた人でも食べられる介護食を研究しています。軟らかいだけでなく、おいしそうな見た目や、家庭で作れる手軽さにこだわり、エビのチリソースやとんかつ、かぶの鶏団子詰めなど、180種類以上を考案しました。ホームページや料理教室で発信したり、管理栄養士や歯科医師に講演で伝えたりしています。

 小さい頃から料理好きで、結婚後は、イタリアンと和食の料理教室を主宰していました。介護食づくりは、夫の闘病がきっかけです。

 夫は2011年、口の中のがんで歯や舌の一部を切除し、下あごにまひが残りました。食事は、舌と上あごでつぶせるものに限られます。スクランブルエッグや全がゆぐらいの軟らかさです。硬い食材は、細かく刻んだり、ミキサーにかけたりする必要がありますが、何を食べているのか分からない見た目になるので、夫は食べたがりませんでした。手料理をなんとか「おいしい」と言ってもらいたくて、夫が55歳で亡くなるまでの約1年間、試行錯誤しました。

 考え出したのが、肉や魚に、長芋や豆腐を混ぜてペーストにしてから、スライス肉や魚の切り身のような見た目に成形する方法です。豚肉、牛肉、エビ、サケなど様々な食材で作り、料理の幅が広がりました。冷凍保存することで日々の手間も減りました。

 何より良かったのは、夫と一緒の献立を楽しめることです。夫には、成形したエビに衣をつけて揚げたエビフライ、私は普通のエビフライといった具合です。

 夫が亡くなってから、「これ、おいしいね」と分かち合う相手がいない寂しさを感じました。一時は包丁を握るのも嫌で、出来合いの総菜ばかりを食べていました。自分だけのために料理をする気は起きないものです。

 それでも、夫が食べられなかった分、いま介護が必要な人や闘病中の人に、家族と同じものを食べて「おいしい」と思ってもらえるようレシピの発信を始めました。

 夫に作ったレシピや闘病記をまとめた私の本を読み、訪ねてきた女性がいました。流動食だった小児まひの娘さんが成長につれ、「お兄ちゃんのごはんと違う」と気づき、食べたがらなくなった。固形の食事を食べさせてあげたいと、女性は本にあるレシピを全部作ったそうです。でも、「足りないから、もっと教えてほしい」と。

 料理は3食、365日のこと。おいしく食べてほしい気持ちがあっても、作る側には大変です。食べる人も作る人も楽しくなれるレシピを考案し、届けていきたいです。(聞き手・小沼聖実)(2024年3月4日付の読売新聞朝刊に掲載された記事です)

やすもり・ちえ 1960年、東京都生まれ。2014年から介護食アドバイザー「クリコ」として都内を拠点に活動。ウェブサイト「やわらかい・飲み込みやすい クリコのふわふわ介護ごはん」などでレシピを紹介している。著書に「希望のごはん」(日経BP社)など。

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